ライ麦畑で倒れ伏す 2nd Season

水平線に恋をして、また船に乗りたい元内航船員のブログ

船員生活に役立ちそうな動画リストを作ってみたよ

YouTube自衛隊ライフハックチャンネルを見てたら、結構船員生活に役立ちそうな動画が多かったので、ついでに自分がロープワークや船体整備の参考に見てる動画も集めて、船員生活に役立ちそうな再生リストを作ってみた。

https://www.youtube.com/playlist?list=PLN-ifbtICQHCCm5pxCpdlgx-4OxYLZKQJ

これからも順次追加する予定。
みんなも良さそうな動画見つけたら教えてね。

船員と酒

昨年末に商船三井客船の「にっぽん丸」がグアム出港時に桟橋と衝突事故を起こした。
船長の呼気からアルコールが検出され、飲酒状態での操船が疑われている。

 

www.sankei.com

それに関連して、海上保安庁が2017年までの5年間で船舶事故を起こした10,592隻のうち、53隻の船員に飲酒したことが確認されたと発表した。割合にすると0.5%である。*1
集計方法などが異なるので一概に比較はできないが、交通事故における飲酒事故の構成比率と近い数字である。

 

www.nikkei.com

船乗りと酒はある意味で切っても切り離せない存在だ。乗船生活は色々と制約が多く、どうしてもストレスが溜まってしまう。その割には案外と暇を持て余す。となると、嗜好品を求めるのが人間の性というものだ。
酒は船乗りにとっては日頃のストレスを発散させ、無聊を慰めてくれるものなのだ。

と言うと、そんなものは言い訳だ、そもそも乗り物を動かす職場にも拘わらず酒を持ち込むこと自体けしからん、と仰る生真面目な人もいるかもしれない。しかし、船が他の乗り物と決定的に異なるのは、乗組員が一年の大半をそこで生活を送る場でもある、ということだ。問題なのは飲酒そのものではなく、あくまでも酒気帯びの状態で職務に就くことである。要は節度を持って飲酒すれば問題ないのだ。

とはいえ、そのあたりの加減を上手くできない人がいるのもしばしばである。事実、俺も二日酔いでまだ酒の匂いが残る状態で当直に出てくる船員を何度も見たことがある。

思うに、そういった人はストレス発散や暇の潰し方があまり上手ではなく、ついつい酒に頼ってしまうのではないかと思う。

そうならないためにも、これから船員を志す人や、船乗り学校の学生さんたちには、今のうちにインドアでできる趣味などを見つけておいてほしいと思う。

最後に、冒頭にあげた「にっぽん丸」の事故だが、船長の飲酒を事故の主因と考えるのはまだ早計だと思うよ。
基本的に操船は船長だけではするものではないし、入出港時には他の航海士も船橋にいるし、水先案内人だっているんだから、あまりにもおかしな操船してたら普通は誰かが気付いて指摘するからね。

*1:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html#kensuの「2.飲酒運転による交通事故の発生状況」より

ゆく年くる年 on the sea

今年もいよいよ暮れてゆく。

陸の上は年末年始の準備に忙しいが、海の上も同様に年越しの準備に余念がない。

船というのは基本的に土日祝日、盆暮れ正月は関係ないので、たとえ正月といえども休めるとは限らないのだが、船内はそれでも年越しを迎えるために居住区の大掃除に、マストやブリッジ内のしめ縄の飾り付けにと、乗員総出で仕事にかかる。

休みなら大したことはないのだが、航海や荷役があるとその合間を縫ってやらなければならないのでなかなか慌ただしい。

 

晦日の夜に荷役を終えて出港するときは独特の感慨が押し寄せてくる。
普段なら大小の船で混雑する東京湾周辺の航路もガラガラで、休みの船を羨ましく感じたり、すれ違う船に同情したりする一方、「まあ、俺たちが仕事するぶんみんなが快適に新年を迎えられるならいいかな」と考えたりもする。

冬は電力に燃料にと、石油の消費が増える。そのためにタンカーはどうしても忙しくなる。一般消費者向けの自動車燃料や灯油を運ぶ白油タンカーは特にそうだ。

日々の生活の裏側で、そのようにして夜に日を継ぎ、家族や友人と離れて今この瞬間も海の上で物流を支える船員たちがいることを知ってもらえば幸いである。

もう2018年も残り1時間を切った。2019年は陸上の人々にとっても、海上の人々にとっても幸多からんことを。

陸に揚がったパパはなにしてんだろうね

俺が幼少の頃、建設会社のCMで「昼間のパパ」というものがあった。

忌野清志郎が歌う「昼間のパパはちょっと違う 昼間のパパは光ってる」という歌詞の歌に乗せて、社員の働くさまが流れる内容のCMだ。

 

youtu.be

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なるほど確かに、家が商売をしているのでもない限り、親がどういった職業に就いているかは知っていても、どんな様子で仕事をしているのかはわからない。仕事モードの親というのは、子供からすれば全く謎である。

逆に、職場の同僚から見れば、オフでのその人の様子はよくわからないものである。雑談で家族や家庭の話をすることはあっても、なかなか想像はしがたい。はたして家に帰ったらこの人はどんな風に振舞うのであろうか、子供や孫の前では普段の姿からは想像もつかないような表情を見せるのか、それとも寝てばっかりのぐうたら親父なのか、職場でも家でも変わらずこの調子なのか……

船に乗って、ともに働く船員を見ていると、ふとそんなことを考えることがある。

なんてったって、昼間どころか、一年の三分の二以上は家にいないのだ。家族からすれば、陸の勤め人以上に謎が多い存在である。
たまに帰ってくると思えば最低ひと月くらいはずっと家にいるわけで、子供からすれば友達の父ちゃんとは違うなんだかよくわかんない人である。現に、乗船中に子供が生まれて下船後に初めて会ったら「しらないおじさん」として接されたという話は今でも聞く。

 若い世代は殊勝な人が多いようで、降りたら家族サービスに励んでいるようだが、子供がある程度手を離れた、おっちゃんおじいちゃん船員になるとよくわからない。それなりに家族サービスしているのか、それとも日がな一日寝てたりパチンコ行ったり酒飲んだりの生活を送っているだろうか。独身の俺には全く想像がつかない。

でも、この人たちにも家族がいて、陸の暮らしがあるんだよなあ、万が一俺が結婚することになったら、どんな風に過ごすんだろうなあ、なんてことを下船する船員を見送るたびに考える。

ただ一つ言えることは、船上での暮らしというのは知らず知らずのうちにストレスが溜まっていくものだし、下船休暇は船員にとっては羽を伸ばせる数少ないひと時だということだ。

船に港が必要なように、船員にとっても「港」になる場所は必要なのである。

事故の原因はあざなえる縄のごとし

昨日のエントリが予想外にアクセス数があり、驚いている。Twitterを見ると、普段海運に関心のない層や、普段なら接点のない層にまで拡散しており、僅かながらではあるがあのエントリを書いた目的は果たせたかな、と感じている。

海難に限ったことではないが、ニュースになるほどの事故になると、とかく過怠を疑われたり、特定人の責任追及という名の糾弾に走ろうとする傾向があちこちで見られる。

実際にそうであれば単純かつ楽に解決するだろう。だが、現実の事故はもっと多様な要因と複雑な経緯を経て起こる。重大な結果をもたらしたものであれば特にそうだ。

リスク管理に「スイスチーズモデル」という概念がある。

これは、システムの様々な防護手段をスライスしたスイスチーズに見立てたもので、それぞれのスライスにはところどころに穴(脆弱性)が空いており、リスクはその穴を通り抜けてゆくが、それらを複数重ねれば結果的に穴は埋まり、リスクは事故に至る前に止まる、という考えかただ。

逆説的に言えば、事故というのはそれぞれのスライスの穴が大きかったり、重ねかたがうまくなかったりしたせいで、リスクが全てのスライスを通過してしまった結果ということだ。

事故の原因を突き止め、再発を防止するにはそれらのスライスを一枚一枚検証し、もう一度重ね合わせてみる、という作業が必要だ。それには多大な時間とコストがかかる。

しかし、世の人の大半はそのことを理解していないから、安易に考え、自分に責任がないのをいいことに好き放題放言してしまう。

もしあなたが事故の報道を見たとき、特に憤りを覚えたときはこのことを頭の片隅にでも置いておいてほしい。

悪意がない限り、望んで事故を起こそうという者はいないのだから。

関空連絡橋に衝突した「宝運丸」船主、清水 満雄氏の弁明は船員から見れば妥当なものだ

一昨年の話になるが、関空島沖合の錨地*1で乗っていたタンカー船が走錨*2しかけたことがある。

 

そのときは堺港で積込を行う前日に入港し、翌朝着岸して荷役を行う予定だった。

夕方から夜にかけて風が強くなるという予報があったものの、

*1:船が錨を下して停泊する場所

*2:錨の固定が外れ、船が流される状態

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まえがきに代えて

船乗りという仕事についてからかれこれ3年と少しになる。
 
 その間、自分の仕事について何か書こうと思いつつも一番最初の書き出しは何にしようか、と迷って結局書かない、ということを繰り返していた。さすがに4年目も過ぎたのでこのままではいかん、いい加減にしろ俺、と思ったのでとりあえず始まりの挨拶に代えて今回のエントリを書いた。
 
できるだけサボらないように頑張りますので、皆様どうか一つよしなに。