ライ麦畑で倒れ伏す 2nd Season

水平線に恋をして、また船に乗りたい元内航船員のブログ

陸に揚がったパパはなにしてんだろうね

俺が幼少の頃、建設会社のCMで「昼間のパパ」というものがあった。

忌野清志郎が歌う「昼間のパパはちょっと違う 昼間のパパは光ってる」という歌詞の歌に乗せて、社員の働くさまが流れる内容のCMだ。

 

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なるほど確かに、家が商売をしているのでもない限り、親がどういった職業に就いているかは知っていても、どんな様子で仕事をしているのかはわからない。仕事モードの親というのは、子供からすれば全く謎である。

逆に、職場の同僚から見れば、オフでのその人の様子はよくわからないものである。雑談で家族や家庭の話をすることはあっても、なかなか想像はしがたい。はたして家に帰ったらこの人はどんな風に振舞うのであろうか、子供や孫の前では普段の姿からは想像もつかないような表情を見せるのか、それとも寝てばっかりのぐうたら親父なのか、職場でも家でも変わらずこの調子なのか……

船に乗って、ともに働く船員を見ていると、ふとそんなことを考えることがある。

なんてったって、昼間どころか、一年の三分の二以上は家にいないのだ。家族からすれば、陸の勤め人以上に謎が多い存在である。
たまに帰ってくると思えば最低ひと月くらいはずっと家にいるわけで、子供からすれば友達の父ちゃんとは違うなんだかよくわかんない人である。現に、乗船中に子供が生まれて下船後に初めて会ったら「しらないおじさん」として接されたという話は今でも聞く。

 若い世代は殊勝な人が多いようで、降りたら家族サービスに励んでいるようだが、子供がある程度手を離れた、おっちゃんおじいちゃん船員になるとよくわからない。それなりに家族サービスしているのか、それとも日がな一日寝てたりパチンコ行ったり酒飲んだりの生活を送っているだろうか。独身の俺には全く想像がつかない。

でも、この人たちにも家族がいて、陸の暮らしがあるんだよなあ、万が一俺が結婚することになったら、どんな風に過ごすんだろうなあ、なんてことを下船する船員を見送るたびに考える。

ただ一つ言えることは、船上での暮らしというのは知らず知らずのうちにストレスが溜まっていくものだし、下船休暇は船員にとっては羽を伸ばせる数少ないひと時だということだ。

船に港が必要なように、船員にとっても「港」になる場所は必要なのである。